電波的な彼女
片山 憲太郎
うぅ……。
今日は忙しかったぁ。
まぁ、精神的なストレスはさほどでもなかったので、本を読むこと自体はできましたが、来週辺りはそれもツラくなるかも。
とまぁ、弱音はさておきまして。
本日読み終わった「電波的な彼女」。
最初、このふざけたタイトルを目にしたとき、
あぁ、お決まりのギャグ小説とかなんだろうなぁ。
しかも、そのギャグがお寒かったりするんだろうなぁ。
なんて思っていたのです。
ただ、食わず嫌いは嫌いなタチなので、今回あえて挑んでみました。
はい、食わず嫌いでした!
ていうか、かなりおもしろいんじゃないでしょうか。
あのふざけたタイトルがなければ、もっと早く手にしていたものを。
てっきりこの作品、タイトルから生まれたものだと思っていたのですが、内容を読む限り、まったくの逆。
作品のテイストから名付けられたんでしょうな。
とまぁ、抽象的な感想は置いておきまして。
内容としては
その見た目と体から入学以来「不良」の冠をいただくことになった柔沢ジュウ。
そんな彼の元に一人の女生徒が、ある一言を従えてやってきた。
「我が心はあなたの奴隷、我が王、ジュウ様」
と。
彼女の名前は堕花雨。
男なら殴れば済む話も、相手が女であれば、そうもいかない。
気味の悪さに逃げるジュウ。
その彼の身近で、異常殺人が発生する。
果たして犯人は誰なのか。
やはり電波的なことを言い続ける……。
驚愕のサスペンス、ここに開幕!
というわけなんですが、最初はファンタジー小説だとばかり思っていた作品が、じつは現代サスペンスだと知ってびっくり。
でも、これはよい感じで裏切られました。
だって、いやはやどうして、サスペンスとしてのストーリー構成は意外にうまいんですもん。
また、電波系彼女である堕花と不良少年ジュウの心の距離がうまく描かれており、さほど不自然さは感じられませんでした。
それに、主人公となる少年のキャラもしっかり固まっていて、判で押したようなスタンダードもてないクンでなかったのも、好印象。
ストーリー的にも、ラストに向けて、物語全体の謎が少しずつ氷解していく醍醐味もありましたし、ライトノベルサスペンスとしての出来はなかなか、というところではないでしょうか。
僕の大好きなラブコメ要素が薄かったのは、ちとばかし残念ではありますが、これはこれで好みの範疇ですね。
ただ、おしむらくは新人ということもあってか、多少読みづらい箇所があり、それが若干のマイナス点ではありましたが、それがなければ、最高、という評価にしても良かったと思える作品でした。
ラノベでサスペンスが読みたい!
という方にはオススメなので、ぜひ読んでみてください。
ちなみに、殺人事件という現実的なことがテーマであるだけに、少しばかり生々しい表現があり、わずかながら性的表現が含まれている箇所もありますので、そういうのに弱い方は、ご注意くださいませ。
以下、ネタバレ。
じつを言うとですね。
物語の中盤くらいで、犯人の目処は立っちゃっていました。
この辺のシチュエーションは、サスペンスの王道というヤツで、サスペンスを知っている人なら、多くの人が感づくはず。
しかし、そうした王道に少しヒネりを入れているところは、技巧的ではあるものの、やってくれるなぁ、という感じ。
ただ、最後にジュウの身に起きる、殴られても殴られても意識を失わない、という展開は、ちょっとクドいというか、そこまで人間は不死身じゃないだろー、という印象は受けます。
でも、そうしたマイナス点も読みやすい文章がカバーしているということが、僕としては高評価に繋がりました。
その辺が、さすが新人賞受賞作家というところなのかもしれませんね。
エピローグが次に期待させる内容だったのも、ワクワク感が持てましたし、間違いなく次も買っちゃいますね。
今度本屋に行ったら、前巻そろえてみよーっと。
片山 憲太郎〔著〕集英社 (2004.9)ISBN : 4086302063価格 : 0通常2??3日以内に発送します。