電波的な彼女 -幸福ゲーム-
片山 憲太郎, 山本 ヤマト
別に、この本のタイトルになぞらえるわけではないのですが、僕は幸せ者だと思います。
どういうことかと言いますと。
この本最高!
昨日今日と、連続で良い本を読めるなんて!
単刀直入に言っちゃえば、そういうわけです。
いやぁ、本当におもしろかった。
特に今回良かったのは、キャラクターの動かし方。
前巻以上に、主要人物は生き生きと動き回っているし、それをジュウの視線で見ていると、すごく楽しい。
絶対に存在しないキャラクターばかりなのに、これだけ感情移入できるというのは、それだけキャラクターの練り込みが完成しているのか、それとも文章の巧みさ故なのか。
たぶん、両方でしょうな。
それだけ、読んでいて楽しい作品でしたね。
しかも、今回はラブコメ要素が強くなっていて、読みながら自分の相好が崩れてしまっているのも分かってしまうほど。
ラストに至っては、雨をはじめとする主要女性キャラに対して、それぞれに萌えを感じる当たり、してやられたっ、という感じですね。
一方、この作品のもう一つの楽しみ方であるサスペンス要素ですが、こちらはちょっと弱まった感があるかも。
なんていうか、夢オチに近いような肩すかし感があり、その辺はサスペンス好きには不満があるかもしれません。
ただ、人生哲学とかキャラクターのパワーなど、その不満要素を補ってあまりあるほどの魅力が、この作品には込められていますので、この作品の魅力は、サスペンスだけじゃないやい! と思っている人なら、十分満足できる内容だと言えます。
さてさて、今回は柔沢ジュウという人間が、少しばかり変化し始めた印象を受ける本巻。
次は彼がどう変わるのか、そして周囲がどう変わるのか、ものすごく楽しみだったりします。
あぁ、やっぱり内容に触れられない書評は、気持ちが伝えづらい!
以下、ネタバレに続きますっ。
本書、186ページより。
「柔沢ジュウという人間を深く知られたら、きっと幻滅されてしまうだろうから」
この一言、ビシーッと来ちゃいました。
ジュウよ、とうとう心を動かされ始めたか!
という感じですね。
それまで、雨や雪姫、そして周囲の人間に飽きられることを前提に、これから訪れるかもしれない人生の孤独に覚悟して生きてきたジュウが、人に嫌われることに対して拒絶反応を示した一行。
今後、この一行は二行となり、十行となり、やがて本全体を埋め尽くすであろうことを考えると、本当に先が楽しみです。
一方、周りのキャラクターですが、こちらも目が離せません。
雪姫は、前にも増して積極的なアプローチを開始するだろうというのは予想していましたが、まさか光までもジュウを意識し始める、というのは予想外でした。
それに、雨の変化もじつに意外で、顔を真っ赤にしたり、ラストで死にかけたジュウの覆い被さって号泣したり。
これまで鉄面皮だった彼女の言動を思いやると、これはかなり衝撃でした。
こうなると、次巻では三角関係勃発かも。
むぅ、次が楽しみです。
と、それとは別に気になることがあったんだ。
円です。
彼女は常に傍観者の位置で登場していますが、もしかして、次は円攻略ストーリーである可能性も……。
本当、想像が膨らむ作品です。
作品の随所に出てくる人生哲学も、ある意味、真理を突いたモノばかりでありますし、これを読んでいると、人生捨てたもんじゃないな、なんて思えてきます。
片山氏、これからも、この流れで作品をお願いしまっせ!
片山/憲太郎??〔著〕集英社 (2005.7)通常24時間以内に発送します。